
セラピストとして、どうすれば求められる人材になれるのか。
技術を磨くこと。
知識を増やすこと。
資格を取ること。
もちろん、どれも大切です。
ただ、現場で本当に求められる人を見ていると、技術や知識だけではなく、日々の仕事の向き合い方に共通点があるように感じます。
今回は、元マイクロソフト役員でありクロスリバー代表の越川慎司氏の著書『会社から期待される人の習慣』を参考にしながら、セラピスト向けに置き換えて整理してみます。
これは、キャリアの選択肢を自分で増やしていくための話でもあります。

求められる人は、選択肢を増やしている
現代は「個人の時代」と言われます。
自分の専門性を高める。
自分のキャリアを自分で考える。
組織に依存しすぎない。
こうした考え方は、セラピストにとっても大切です。
ただ一方で、仕事は一人では完結しません。
リハビリの現場でも、医師、看護師、介護士、相談員、受付、事務、他部署のスタッフなど、多くの人の協力があって初めて仕事が進みます。
つまり、個人の力が大事な時代だからこそ、周囲と協力できる人の価値は高くなっているのだと思います。
主任やプロジェクトリーダーに選ばれることも、単に「出世する」という話ではありません。
それは、自分の仕事の進め方や関われる範囲の選択肢が増えるということです。
出世はゴールではなく、手段の選択肢を増やすこと。
そう考えると、管理職やリーダーという役割も、自分軸のキャリアの一部として捉えやすくなるのではないでしょうか。
評価する側は、意外と“当たり前”を見ている
面白いのは、評価する側と評価される側で、重視しているポイントにズレがあることです。
評価する側が見ているのは、
- 時間や約束を守る
- 相手の話をよく聞く
- 大きな声で挨拶する
といった、かなり基本的なことです。
一方で、評価される側は、
- 上司に気に入られているか
- 自分の意見を積極的に言えているか
- 目立てているか
といった部分を気にしやすい。
もちろん、自分の意見を持つことは大切です。
ただ、評価する側がまず見ているのは、派手な実績やプレゼン力よりも、
この人は信頼して任せられるか
という部分なのだと思います。
セラピストも同じです。
「上司に嫌われているから評価されない」
「自分は目立つタイプじゃないから選ばれない」
そう思ってしまうこともあるかもしれません。
でも実際には、
- 期限を守る
- 挨拶をする
- 人の話を最後まで聞く
- 約束したことをやり切る
こうした当たり前を、他の人より丁寧に積み上げられる人が、結果的に信頼されていきます。
優秀そうに見える人よりも、安心して任せられる人。
その積み重ねが、キャリアの選択肢を増やしていくのだと思います。

求められる人は“キゲン”を大切にしている
求められる人は、2つの「キゲン」を大切にしていると言われます。
一つは、約束の「期限」。
もう一つは、感情の「機嫌」です。
まず、期限を守る人は信頼されます。
提出物、カルテ、書類、報告、連絡。
小さな約束を守る人は、少しずつ「この人なら任せても大丈夫」という信頼を積み上げていきます。
もう一つは、機嫌です。
いつも不機嫌そうな人よりも、挨拶ができて、話を聞いてくれて、相談しやすい人の方が一緒に仕事をしたいと思われます。
これは媚びるという話ではありません。
仕事は感情のある人間同士で進めるものです。
どれだけ技術があっても、関わりにくい人には仕事が集まりにくい。
逆に、安心して声をかけられる人には、自然と相談や役割が集まっていきます。
優秀な人は、大事な仕事を先に入れている
仕事ができる人は、優先順位のつけ方がうまいです。
よく言われるのが「ビッグロック戦略」です。
コップに大きな石と小さな砂を入れるとき、先に砂を入れると、大きな石が入りません。
でも先に大きな石を入れると、その隙間に砂を入れることができます。
仕事も同じです。
一番大事な仕事を先に予定に入れる。
そのあとに、細かい仕事を入れる。
セラピストで言えば、
- ノルマ単位
- カルテや書類の期限
- カンファレンス準備
- 担当者会議の資料
- 重要な報告や相談
こうした信頼に直結する仕事を、先にスケジュールに入れることが大切です。
「時間が余ったらやる」では、ほとんどの場合、後回しになります。
そして後回しになった仕事ほど、雑になり、信頼を落としやすい。
だからこそ、重要な仕事ほど先に予定に入れる。
これはセンスではなく、習慣です。

重要な仕事は、できるだけ早い時間にやる
大事な書類業務や、期限が迫っている仕事を、1日の最後に回してしまうことはありませんか。
「患者さん対応が終わってからやろう」
「今日の最後にまとめてやろう」
そう思っていても、夕方には疲れています。
急な対応も入ります。
記憶も曖昧になります。
集中力も落ちます。
だから重要な仕事ほど、できるだけ早い時間に取り組む。
朝のうちに少しでも進める。
午前中に叩き台だけ作る。
クライアント業務の合間に細かく区切って進める。
それだけで、仕事の質はかなり変わります。
「忙しいからできない」のではなく、忙しいからこそ先に入れる。
この感覚を持てる人は、仕事の安定感が出てきます。
愚痴よりも、自分の整え方を持つ
求められる人は、ストレスがない人ではありません。
むしろ、任される人ほどストレスは大きくなります。
大事なのは、そのストレスをどう扱うかです。
職場で上司や環境の愚痴を言っても、上司も環境もすぐには変わりません。
さらに愚痴は、複数人で話すほど増幅します。
最初は軽い不満だったものが、話しているうちにどんどん大きくなっていく。
結果として、誰も得をしない空気が生まれてしまうこともあります。
だからこそ、自分のストレスを自分で整える方法を持つことが大切です。
- 運動する
- サウナに行く
- 散歩する
- 早く寝る
- 信頼できる人に相談する
- 書き出して整理する
方法は何でもいいと思います。
大事なのは、職場に不機嫌を持ち込み続けないこと。
自分の機嫌を自分で取れる人は、周囲から見ても安心感があります。
資料作りも“相手軸”で考える
資料作りにも、その人の仕事の姿勢は出ます。
カラフルで情報量の多い資料は、一見すごく見えるかもしれません。
でも、読む側にとっては分かりにくいこともあります。
大事なのは、自分が作りたい資料ではなく、相手が理解しやすい資料を作ることです。
色は多くても3色以内。
伝えたいことは絞る。
重要な部分は目立たせる。
情報を詰め込みすぎない。
これはプレゼンでも、カンファレンス資料でも、上司への提案資料でも同じです。
セラピーと似ています。
自分がやりたい手技を押しつけるのではなく、相手の状態に合わせて伝え方や関わり方を変える。
資料作りも同じで、読む人の状態を想像できる人は、仕事でも信頼されやすいと思います。
また、資料を完成させてから見せるのではなく、途中で方向性を確認することも大切です。
「この方向性で合っていますか?」
「この項目は入れた方がいいですか?」
早い段階で確認できる人は、やり直しが少なく、周囲を安心させます。
「ちょっといい?」と声をかけられる人になる
職場で、
「ちょっといい?」
と声をかけられる人がいます。
これは、実はかなり大事なサインです。
その人が相談しやすい。
協力してくれそう。
話を聞いてくれそう。
そう思われている証拠だからです。
もちろん、忙しい時もあります。
その場合でも、
「もちろんです。お昼前でもいいですか?」
「今の対応が終わったら伺います」
と返せるだけで印象は変わります。
大事なのは、最初に拒絶しないこと。
相談しやすい人には情報が集まります。
情報が集まる人には役割が集まります。
役割が集まる人は、自然と成長の機会も増えていきます。
最後に
求められるセラピストになるために、特別な才能が必要なわけではありません。
もちろん技術や知識は大切です。
でも、それ以前に、
- 期限を守る
- 機嫌よく働く
- 人の話を聞く
- 重要な仕事を先にやる
- 愚痴ではなく行動に変える
- 相手が理解しやすい資料を作る
- 相談されやすい人でいる
こうした当たり前の積み重ねが、信頼を作ります。
信頼される人は、役割を任されます。
役割を任される人は、経験が増えます。
経験が増える人は、キャリアの選択肢が増えていきます。
結局、求められるセラピストとは、すごいことを言う人ではなく、周囲が安心して一緒に働ける人なのだと思います。
当たり前を、誰よりも丁寧に積み上げる。
その習慣が、キャリアを少しずつ広げていくのではないでしょうか。









