
整形外科で女性患者さんをみていると、
「生理前だから腰痛がひどいです」
「生理中は股関節まで痛くなるんです」
「毎月1〜2日目は寝込むくらい痛いです」
そんな話を聞くことがある。
でも実際、
“月経痛って婦人科の問題でしょ”
“プロスタグランジンの影響だから仕方ない”
で止まってしまうこと、意外と多くないだろうか。
私自身、最初はそうだった。
なんとなく
月経痛=プロスタグランジン
という知識はあったけど、
「なぜ同じ月経でも人によって痛みの感じ方が違うのか?」
「なぜ寝込む人とそうでない人がいるのか?」
までは、正直深く考えられていなかった。
でも臨床でみていると、
どうも“分泌量だけ”では説明しきれない感じがある。
一般的な解釈
月経痛(特に機能性月経困難症)の主な要因としてよく言われるのが、**プロスタグランジン(PG)**の影響。
月経時、子宮内膜が剥がれる際にプロスタグランジンが分泌され、子宮を収縮させる。
その収縮によって血流低下(虚血様状態)が起こり、痛みにつながると言われている。
実際、
* 経血量が多い
* 血の塊が多い
* 月経初日〜2日目が特に強い
* NSAIDsが効く
こういったケースでは、
プロスタグランジンの影響が比較的大きい可能性はあると思う。
だから、プロスタグランジンを理解すること自体は大事。
ただ、ここで思考停止してしまうと、
「ホルモンだから仕方ない」
になってしまう気がする。

臨床の限界と課題
ただ、臨床で疑問なのが、
“同じように月経が来ているのに、なぜ痛みがここまで違うのか?”
というところ。
同じようにプロスタグランジンが分泌されていても、
* 少し重だるい程度の人
* 鎮痛薬なしで生活できる人
* 寝込むほど痛い人
がいる。
ここって、
「プロスタグランジンが出ているかどうか」だけでは説明しきれない気がしている。
実際、痛みは組織刺激量だけで決まるわけではない。
整形領域でも、
画像所見と症状が一致しないことは珍しくない。
月経痛も少し似ていて、
“その刺激を身体がどう受け取る状態なのか”
が関係している可能性はないだろうか。
“プロスタグランジンが悪い”で終わらせない
私自身は、
月経痛は「プロスタグランジン量 × 身体状態」で症状が変わる
という見方をしている。
例えば、プロスタグランジンによって子宮が収縮すると、もともと循環不全が起きやすい人では、血流低下が強まり、侵害刺激が増幅される可能性がある。
冷え、長時間座位、呼吸の浅さ、過緊張、活動量低下など。
骨盤周囲の循環が低下しやすい背景がある人は、同じ刺激でも症状が強く出ることがあるかもしれない。
一方で、
感覚過敏が強い、疼痛閾値が低そう、睡眠不足、慢性的ストレス、自律神経の不安定さがある人では、
**“脳側の反応性”**が高くなっている可能性もある。
つまり、
同じ刺激でも、痛みとして強く感じやすい状態
になっているケース。
また、
鋭い痛みや刺すような痛みがある場合は、子宮収縮だけでなく、骨盤周囲筋の防御的緊張や神経過敏が関係していることもあるかもしれない。
もちろんこれは単純化できる話ではなく、
器質的問題(内膜症や腺筋症など)との鑑別は必要。
でも、
“プロスタグランジンが悪い”で終わらせない視点
は、セラピストにとって意外と重要なのではと思っている。

臨床での判断プロセス
私がまずみるのは、
「プロスタグランジン影響が強そうか?」
* 経血量が多い
* 血塊が多い
* 月経初日〜2日目の激痛
* NSAIDsが効く
このあたり。
ここが強ければ、
PG影響+循環不全要因を探す。
例えば、
* 冷え
* 呼吸状態
* 運動量
* 腹部や股関節周囲の緊張
* 長時間同一姿勢
など。
一方で、
「神経系の感受性が高そうか?」
* 感覚過敏
* 疼痛閾値低そう
* 睡眠不良
* ストレス強い
* PMS症状強い
* 光・音・匂いに敏感
こういった背景があれば、
神経系の過敏性や自律神経の影響も考える。
ここは呼吸、睡眠、活動量、安心感、過緊張の緩和など、
“身体の余力”を上げる方向が必要なこともある。

整形外科理学療法士の+α
月経痛って、
整形外科では意外と触れづらい。
先輩に聞きづらいし、学校でも深く習わない。
だからこそ、
「婦人科の問題だからわからない」
で止まってしまいやすい気がする。
でも、
プロスタグランジンの影響だとしても、
“なぜこの人はこんなに強く痛むのか?”
を考えていくと、
セラピストとして介入できる部分が見えてくることがある。
それは月経に限らず、
肩でも腰でも首でも同じで、
痛みは刺激量だけで決まらず、その人の身体状態によって増幅される
ことがある。
月経痛も、少しその視点で見直してみると、見える景色が変わるかもしれない。








